リリース:2016年8月
レーベル:Star music (Star records)
フォーマット:CD
ディスク枚数:1
歌詞カード:あり
収録曲:
01. Tayo Na Lang
02. Hanggang Kailan
03. Ayoko Na Sana
04. Tag-Araw Tag-Ulan
05. Tanging Ligaya Ko
06. Everything I Own
07. Angel
08. Pare Mahal Naman Kita
bonus tracks:
09. Bakit Ba Ikaw
10. Kung Sakali
11. Pare Mahal Mo Raw Ako
12. Crossroads ('The Love Affair' sailing theme)
13. Parang Tayo Pero Hindi - feat. Angeilne Quinto
一口メモ…
X Factorフィリピン版のオーディションを経て2013年にデビューしたMichael Pangilinanのセカンドアルバムです。
オーディションでは最終先行に残ることが出来ず地味な存在でしたが歌の実力を買われてデビュー、
Himig Handog2016でファイナル曲のボーカリストを務めたり、若手ボーカルユニット
Haranaのリーダーに抜擢されるなどフィリピンショービズ界の腕利きプロデューサーの間では引っ張りだこの彼。今年6月に行われたフィリピンフェスティバルにはソロシンガーとして来日もしているので彼の歌を耳にした方もいらっしゃることでしょう。
今回リリースされたセカンドアルバムは爽やかで都会的なAOR系サウンドとオーソドックスなOPMサウンドがミックスされたいかにも新しい世代のフィリピンアーティストの1枚。
ブルーアイドソウル的なミディアムナンバーのトラック01はJonathan Manaloのペンによる佳作。トラック03、04では往年のAOR系フィリピンポップスをリメイク。トラック03はフィリピン産AORの第一人者Odette Quesada作曲、1991年にAriel RiveraがヒットさせたAyoko Na Sana、トラック04はWilly Cruz作曲、Hajji Alejandroのヒット曲Tag-Araw Tag-Ulan。この2曲はメロディが美しすぎるということはもちろん、Michaelのボーカルが爽やかで且つ切ない表情をとても上手くつけていて、これから物思いにふける秋という季節を迎える日本で聴くと思わず涙ぐんでしまいそう…。
因みにTag-Araw Tag-Ulanはアレンジャーに若手ソングライターのKiko Salazarがクレジットされていますが、ストリングスやシンセサイザー、コーラスワークなど非常に多くの要素が盛り込まれていて、60年代のブリティッシュロックから70年代のソウルミュージック、80〜90年代のAORまでとても良く研究され、最新のサウンドにマッチさせているところなどKikoの並々ならぬ才能を感じさせる非常にレベルの高いトラックに仕上がっています。この多様な要素が絡み合ったバックトラックに上手く乗りながらポップソングとしてまとめているMichaelのボーカルも見逃せません。
こういう丁寧で内容が濃く、質も高い、それでいてポップソングとして楽しく聴ける作品を作り出せる若手フィリピン人アーティストの才能にも注目です。
続くトラック05は新進気鋭のソングライターRox Santosのペンになるオリジナル曲(作詞はMichael Pangilinan自身)。上記に収録のフィリピン産オリジナルAORを聴いて、踏まえた新しい時代のフィリピンポップスに相応しい名曲です。
トラック06と07はおなじみのポップヒットのカバー。ここはMichaelの独壇場。トラック06はウエストコースとロックバンドの草分け的存在のブレッドのヒット曲でBoy Georgeもカバーしているポップスタンダード、21世紀のオリジナルバージョンと呼べるトラックに仕上がっています。トラック07はSarah Mclachlanの1997年のヒット曲、男性シンガーによるカバーは珍しいかもしれませんがオリジナルには無い哀愁のようなものを含んだトラックです。
ボーナストラックとして収録されているトラック10と11はデビューアルバムからの再収録、トラック11はHimig Handog2014の、トラック13はHimig Handog2016のそれぞれファイナル曲(Michaelがボーカルを担当した曲)、トラック10はBea Alonzo主演の映画The Love Affairのラストで流れるテーマソングです。
アルバム全体を通してフィリピンポップスが歩んできた歴史と現在のアーティストの指向性や才能を合わせた内容の濃い聴き応え十分なアルバムに仕上がっています。
OPMファンだけでなく「いいサウンド」を求めていらっしゃるポピュラーミュージックファンの方にもお奨め!の1枚です。